2017年雪組『琥珀色の雨にぬれて』1920年代パリ。彼女への恋にすべてを賭けた・・・美しく幻のような日々の思い出

琥珀色の雨にぬれて
しらこまる

こんにちは、しらこまるです!

今回は、2017年雪組全国ツアー公演『琥珀色の雨にぬれて』をご紹介します。

第一次世界大戦の終結直後、束の間に訪れた自由な風潮と、熱狂に包まれたパリを舞台に繰り広げられる大人の恋愛模様。

DVDを持っているのにも関わらず、数年後にBlu-rayが発売されたら迷いなく購入してしまったほど大好きな作品です!

本作は、今回ご紹介する2017年雪組版を含めて過去に6回も上演されている超名作!

6回目の上演に当たる2017年雪組版は、当時トップコンビに就任したばかりの望海 風斗(のぞみ ふうと)さん真彩 希帆(まあや きほ)さんのプレお披露目公演でもありました。

※公演の詳細はこちら→宝塚歌劇団公式HP

DVD / Blu-ray 収録情報

  • タイトル:ミュージカル・ロマン『琥珀色の雨にぬれて』
  • 作:柴田 侑宏
  • 演出:正塚 晴彦
  • 主な出演者:望海 風斗(のぞみ ふうと) / 真彩 希帆(まあや きほ) / 彩凪 翔(あやなぎ しょう) / 星南(せいな)のぞみ
  • 収録年月日:2017年9月18日 愛知県芸術劇場大ホールにて
  • 同時上演(収録):Show Spirit『”D”ramatic S!』

琥珀色の雨にぬれて

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あらすじ

舞台は1922年、第一次世界大戦終結後のフランス。束の間に訪れた自由な風潮と、熱狂に包まれた花の都パリ。

秋のある朝、クロード・ドゥ・ベルナール公爵【望海風斗(のぞみ ふうと)さん】は、フォンテンブローの森を散歩していて、神秘的な美しさをまとった一人の女性に出会った。

彼女の名はシャロン・カザティ【真彩 希帆(まあや きほ)さん】。一目でシャロンに心惹かれてしまったクロードに、彼女の取り巻きのひとりであるジゴロ、ルイ・バランタン【彩凪 翔(あやなぎ しょう)さん】はシャロンの素性を明かす。

彼女は絵や写真のモデルをしたり、ドレスを着て客の前を歩くことでその広告塔になる“マヌカン”で、有力な銀行家をパトロンに持つような女…クロードとは生きる世界が違う女なのだと。

そんなルイの忠告にクロードは反論し、どちらがシャロンの心を射止めるか、正々堂々勝負しようと持ちかける。

クロードが帰宅すると、空軍時代からの親友ミッシェル・ドゥ・プレール伯爵【真那 春人(まな はると)さん】が彼の帰りを待っていた。

共に民間航空事業を起こす計画について二人で話し合っていると、クロードの姉ソフィー【早花(さはな)まこさん】と、ミッシェルの妹でクロードのフィアンセであるフランソワーズ【星南(せいな)のぞみさん】が部屋に入ってくる。

ソフィーからフランソワーズと早く結婚するように促されるクロードだが、先ほど出会ったシャロンのことが忘れられない彼は、心ここにあらずの様子で言葉をにごす。

ある日、パリの高級クラブ「フルール」を訪れていたクロードは、シャロンが質の悪い客に絡まれているところに遭遇する。

シャロンと客の間に割って入り、その場を収めたクロードの頬に口づけをするシャロン。

その様子から、シャロンがクロードに恋していると察したルイと「フルール」のマダム・エヴァ【沙月 愛奈(さつき あいな)さん】。

そして、フロアの片隅からクロードを見つめるフランソワーズの姿があった。

後日、フランソワーズに呼び出されたクロードは、シャロンが銀行家のジョルジュ・ドゥ・ボーモン伯爵【奏乃(そうの)はるとさん】に連れられて、南フランスのニースへ出かけることを知る。

それはエヴァからの伝言だそうだが、よりによってフィアンセであるフランソワーズから聞かされたことに動揺しつつも、クロードはルイと共に、シャロンを追ってニース行きの青列車に乗り込むのだった。

ニースへ向かう青列車の展望台で、クロードとシャロンは語らいのひとときを過ごす。

北イタリアにあるマジョレ湖では、琥珀色の雨が降るらしいと語るシャロンに、いつか二人でマジョレ湖へ行こうと約束するクロードだったが・・・。

見ごろ!見どころ!オススメどころ!

『琥珀色の雨にぬれて』・・・このお洒落でロマンティックな薫りと、どこか悲しげな響きを持つタイトルも魅力的な本作。

当時トップコンビに就任したばかりの望海 風斗さん、真彩 希帆さんのプレお披露目公演でもあり、優れた歌唱力を持つお二人が、相手役同士として初めて舞台に立つ姿に惚れ惚れとした作品です♫

この項目では、そんな本作の魅力や、2017年雪組版ならではの見どころをご紹介していきたいと思います!

物語を彩るコンチネンタル・タンゴが素敵!

本作では、物語の舞台である1920年代~1930年代にかけてヨーロッパで大流行していたタンゴの名曲が所々で登場します。

特にこの作品で使用されているのは、「コンチネンタル・タンゴ」。タンゴ発祥の地アルゼンチンからヨーロッパに伝えられ、華麗で優美なワルツやクラシック音楽などのテイストが反映されたコンチネンタル・タンゴは、大人の恋愛模様を描く本作に彩りを添えています。

①♪ジェラシー♪

最初の数小節は、一度聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。

開演と同時に、コンチネンタル・タンゴの中でも特に有名なこの曲に乗せて、プロローグが展開されます。

1920年代当時のタキシードとドレスをモチーフにした揃いのお衣装に身を包み、何組もの男役・娘役が優雅にタンゴを踊る場面は、開演6分の間で既に観客の心をつかんで離しません!

しらこまる

♪ジェラシー♪を最後まで聴いたのは、本作を観劇したときが初めてでした。

タイトルも知らず、最後まで聴いたこともなかったことを激しく後悔するくらい琴線に触れたメロディ…。そして、妃華(ひめはな)ゆきのさんの透き通った歌声…。

カッコいい男役さん、綺麗な娘役さんのダンスにあわせて聴いたせいか、大変心に残りました。

②♪奥様お手をどうぞ♪

パリの高級クラブ「フルール」で、クロードとシャロンが2度目に出会う場面で歌われる曲です。

フルールのマダム・エヴァ【沙月 愛奈(さつき あいな)さん】とルイ【彩凪 翔(あやなぎ しょう)さん】を中心に、他4組のジゴロと貴婦人のカップルが、暗がりの中スポットライトを浴びて踊ります。

特に、ルイに身をまかせてしなやかに踊るエヴァ・・・妖艶で洗練された雰囲気が、とっても素敵です!

しらこまる

沙月愛奈さんという名ダンサーを知ったのは、本作のこの場面がきっかけです。

また、4組のカップルの中でも、ジゴロのローラン【星加 梨杏(せいか りあん)さん】とエレーヌ・ドゥ・オノレ侯爵夫人【白峰(しらみね)ゆりさん】がひときわ美しく、目を奪われました!

この場面の後半では、クロードの心の変化を感じ取ったフランソワーズが、彼の手を取って踊りだします。

どこか哀愁の漂うメロディと共に、フランソワーズの悲しく複雑な心境が感じられて、胸がチクッと痛むシーンでもあります。

しらこまる

この場面で、♪奥様お手をどうぞ♪を1曲丸々歌っているのが、当時研究科(入団)4年目くらいだった羽織 夕夏(はおり ゆうか)さんです。

つい口ずさんでしまうような、お洒落でいてどこか悲しげなメロディに心惹かれつつ、彼女の揺らがずに伸びる高音の素晴らしさに感銘を受けました。

この記事を書いている現在、羽織さんは研究科9年目。公演の中でも特に、彼女の歌唱力が光る場面が増えてきて嬉しいです!これからも応援しております!

③♪黒き瞳 / 黒き汝が瞳♪

クロードを追ってパリからニースまで車を飛ばしてきたフランソワーズに、シャロンが手ひどいしっぺ返しをしたことで、シャロンに別れを告げたクロード。

その1年後、2人がフルールで思わぬ再会を果たす場面でエヴァが歌っている曲です。

ロシアのジプシー民謡をもとにして作られた曲で、沙月さんの歌声とともに醸し出されるエキゾチックな雰囲気が、衝撃的なシャロンとの再会に激しく心動かされるクロードの心情を、ドラマティックに描き出しています!

しらこまる

この項目ではコンチネンタル・タンゴの名曲を取り上げましたが、主題歌の♪琥珀色の雨にぬれて♪♪恋してしまった♪♪セ・ラヴィ♪など宝塚オリジナル楽曲も、その旋律と歌詞の中に登場人物たちの心情が繊細に表現されている素敵な楽曲です。

タンゴ

【CD】『アルフレッド・ハウゼ全集~魅惑のタンゴ~』
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この項目でご紹介したコンチネンタル・タンゴの名曲を、アルフレッド・ハウゼ・タンゴ・オーケストラの演奏で聴くことができます♪
この楽団が来日した際に演奏会へ行ってしまうほど、本作の観劇を機にすっかりタンゴの魅力にとりつかれてしまいました💦
※しかも演奏会終了後には、指揮者の方にサインを頂き、握手までしてもらいました(ちゃっかり)。

道ならぬ恋の顛末…なのに何故、この物語は美しいのか

真面目で純粋な青年貴族クロードは、フランソワーズという愛らしく清純なフィアンセ(後に結婚)がいるのにも関わらず、妖しく神秘的な美しさをまとった女性シャロンに夢中になっていきます。

常識的に考えれば、主人公クロードの振る舞いは紛れもなく不倫。社会通念上、肯定されるべきではない道ならぬ恋の顛末を描いた作品なのに何故、こんなに美しく心惹かれるのでしょうか。

理性に抗えないほど恋い焦がれてしまうシャロンという存在に翻弄されるクロード。

クロードの心を独り占めにしていたとしても、生きる世界、住む星の違いを感じて別れを告げるシャロン。

シャロンへの思いに突き進み、フィアンセを前にして堂々と弁明もできないクロードの純粋さに、残酷なほど傷つけられるフランソワーズ。

しらこまる

堂々と弁明されても呆れますが…。挙句の果てには、身を引いてひとりマジョレ湖へ向かうシャロンと別れた後、フランソワーズに「一人にしてくれないか」と言うクロード。

トレンチコートが似合う望海さんのカッコよさにダマされましたが、マジで最低なヤツだな!って思いますね、実際にこんな人がいたら(笑)

この3人が、物語終盤にリヨン駅で顔を合わせる場面。フランソワーズが今にも壊れてしまいそうに訴える、「悲しいけれど、みんなが自分に正直に生きればこうなるのね。…私はどうやって正直に生きていけば良いの?…人間って、悲しいのね」というセリフが胸に迫ります。

そこで、心にもない愛想尽かしをして去っていくことで、決着をつけるシャロン。

結局、誰もが心に傷を負って終わるという結末。

とはいえ、シャロンが身を引いて踏みとどまったからこそ、クロードがただ一人恋したシャロンとの出来事、まるで夢の中の幻であったかのような日々を、美しい思い出のままにできた…。 そんな悲しさに美を感じることが、この作品に心惹かれる理由なのかなぁと思います。

・・・フランソワーズをあれだけ苦しめておいて、自分だけ美しい思い出に浸るって・・・そりゃあないぜ、クロードさんよぉ。

しらこまる

「私が今まで出会ってきた男たちは、私をまともに相手にしてくれなかった。ただ自分のものだと見せびらかすときだけの値打ちしかないのが本心(略)…そんな私を、あなたはそうは見なかった。」

美しさゆえに周りからチヤホヤされながら、自由気ままに生きるシャロンのどこに、クロードは「純粋無垢」という要素を感じたのか…観劇当時はよくわからないまま見過ごしてしまっていました。

シャロンのこのセリフから、洗練されたパリジェンヌである彼女に、純粋に心から誰かに愛されたいと願う気持ちがあったのだと後になって気づきました。

そんな少女のようなささやかな願いが成就する前に、“分別”ある成熟した大人の女性になってしまった彼女の純粋さを、クロードは出会ってすぐに感じ取ったのですね。

まるで香水のよう・・・ルイ、エヴァ、シャルル、ジゴロ達の存在感!

ルイを始めとするジゴロの面々。フルールのマダムであり、ジゴロたちを教育するエヴァ。陰でジゴロを束ねるシャルル・ドゥ・ノアーユ子爵【桜路 薫(おうじ かおる)さん】。

彼らが放つ存在感は、序盤から終盤にかけて少しも薄れることなく物語のアクセントとなる…まるで、ある時ふと薫り立つ香水のよう…。

しらこまる

柴田 侑宏先生の作品は、娘役さんにも重要な役が割り振られ、主人公以外の人物の人生や人間模様まで綿密に描かれていて、それが物語により重厚感を与えている点が大きな魅力です。

セリフに使われる美しい言葉の数々は、美しく奥深いほど、下手をすると棒読みになってしまいそうな難しさがあります。そのようなセリフに情感を込めて演じ、舞台上でその人物の人生を生きる出演者の方々・・・尊敬しかありません!

中でもやはり印象的なのは、ニースでクロードに別れを告げられたシャロンと共に姿を消したルイ。

ニースのホテルを後にしてまた姿を現すまで、ルイとシャロンとの間に何が起きて、何が起こらなかったのか…詳しくは語られていません。

ただ、物語終盤のルイのセリフに、ルイというキャラクターの魅力が全て詰まっているように感じました。

「決して後悔はしておりません。むしろ熱い血が自分にも通っていることを知って、嬉しいくらいです。ひとりの女のために、命をかけても良いと思えたことは、私には何よりの収穫でした。…シャロンはやはり、素晴らしい女でした。」

しらこまる

クロードと共にシャロンを巡って勝負し、最終的にはその勝負に敗北したルイ。

そんな彼が、新たな道を歩み始めるまでの生きざまや心情の変化を、クールに清々しく演じた彩凪 翔さん。超カッコいいです!

使用楽曲の試聴・購入について

本作で使用された楽曲は、下記の公式サイトから試聴・購入が可能です✨

Quatre Rêves ONLINE / TAKARAZUKA REVUE MUSIC

この記事でご紹介できなかった宝塚オリジナル曲のうち、♪青列車でニースへ♪は特に大好きな曲です!一度聴いたら忘れられない軽快な曲で、聴けばあなたも・・・「夢!恋!ロマン!野望!」と口ずさまずにはいられなくなるでしょう(笑)

また、羽織 夕夏さんが歌う♪奥様お手をどうぞ♪が収録されていないのが残念ですが、2012年星組版には夢妃 杏瑠さんが歌う同曲が配信されていますので、ぜひこちらもチェックしてみてください!

しらこまるのタカラヅカ小話「観劇当時の思い出」

本作は、当時の雪組新トップコンビのプレお披露目公演ということで、望海 風斗さんがトップスターとして舞台の中心で輝く姿を観ること、そして相手役の真彩 希帆さん「どんな風にシャロンを演じるのか」を楽しみに、観劇の日を心待ちにしていました。

真彩さんを知ったのは、星組から雪組に組替えし、「(望海さんの相手役として)次のトップ娘役になるだろう」という噂が流れ始めたことがきっかけでした。

同じ頃だったか、宝塚グラフの人気コーナー『波瀾爆笑!?わが人生』の真彩さんの登場回を読んで、「恐らく同い年だろうなあ~(←すみれコード💦)」と思ってからは勝手に親近感を抱き、雪組に来て初めての大劇場公演『幕末太陽傳』『Dramatic “S”!』から真彩さんを意識して観るようになったと記憶しています。

プレお披露目公演が『琥珀色の雨にぬれて』『”D”ramatic S!』に決まり、真彩さんのトップ娘役として初めて演じる役は「The 大人の女性!」なヒロイン、シャロン。

当時、お稽古期間中に受けたのであろうインタビュー記事や番組を拝見し、シャロンのような役を演じるのが初めてで、しかも(主人公が一目惚れしてしまうほど)神秘的で美しい女性、いわゆる堅気の女ではないけれど、内面に純粋さを隠している洗練された生粋のパリジェンヌという大変難しい役柄であることを知りました。

それを知った私は、恐れ多くも「私と同い年の子が(←だから、すみれコード💢)、そんな難しい役に挑戦するなんて…プレッシャー半端ないだろうな。大丈夫かな?」と心配になってしまったのです💦

しらこまる

今思えば、私なんぞがそんな心配をするなんて・・・なんておこがましいのやら!!本当に申し訳ございませんっっ!!💦

冒頭で、真彩さんが「どんな風にシャロンを演じるのかを楽しみに」と書きましたが、実際は楽しみ半分、不安と緊張?半分で劇場へ行きました。

しかし!私のような超ド素人の心配なんて何のその!持ち前の歌唱力を発揮しつつ、真彩さんらしいシャロン像を深めて堂々と演じきり、ショー『”D”ramatic S!』では、太陽のような笑顔でキラキラパワーを振りまいて大活躍されていました!

販売されているDVD/Blu-rayなどに、その姿が映像としてしっかりと記録されています。

しらこまる

大きなプレッシャーの中でも役を深め、その過程でたどり着いた自分なりの表現を貫き、舞台上で堂々と演じている真彩さんの姿に、当時社会人2年目だった私は沢山の勇気と元気をもらいました!

その後、雪組トップ娘役としてさらに芸を磨き、惜しまれながら退団された真彩さん。

退団後も数々の舞台に出演し、その卓越した歌唱力を発揮して活躍されています✨

今後も真彩 希帆さんのご活躍を楽しみに、陰ながら応援していきたいと思います!

ここまでお読みくださり、ありがとうございました!この記事が、あなたにとって「次なる宝塚作品との出会い」のきっかけになれましたら嬉しいです。

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