舞台はハリウッドと並ぶ映画の都、1927年のドイツ・ベルリン。
ナチスが暗い影を落とし、大衆の娯楽である「映画」までも、プロパガンダ(戦意高揚などの政治的宣伝)のために利用しようとする圧力が強まる中、人々に喜びや希望を与えられる映画を作るために戦った映画人たちの物語。
映画を愛し、映画作りに誇りと情熱を持つ彼らの生き様が、心に響く作品です!
※公演の詳細はこちら→宝塚歌劇団公式HP
目次
DVD収録情報
- タイトル:ミュージカル『ベルリン、わが愛』
- 作・演出:原田 諒
- 主な出演者:紅(くれない)ゆずる / 綺咲 愛里(きさき あいり) / 礼 真琴(れい まこと)
- 収録年月日:2017年10月13日 宝塚大劇場にて
- 同時上演(収録):タカラヅカレビュー90周年『Bouquet de TAKARAZUKA ブーケ ド タカラヅカ』
【Blu-ray】2017年星組『ベルリン、わが愛』『Bouquet de TAKARAZUKA』
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あらすじ
1927年、ドイツ・ベルリン。数々の名作を生み出してきた映画会社UFA(ウーファ)は、巨額の負債を抱えて倒産寸前に追い込まれていた。
そんなUFAの経営を立て直すべく、低予算で起死回生のヒット作を!ということでその製作を引き受けたのは、助監督の青年テオ・ヴェーグマン【紅(くれない)ゆずるさん】だった。
それまで主流だったサイレント(無声)映画ではなく、歌入りトーキー映画の製作を提案したテオは、親友の絵本作家エーリッヒ・ケストナー【礼 真琴(れい まこと)さん】をシナリオライターに、さえない若手俳優ロルフ・シェレンベルク【瀬央(せお)ゆりあさん】と、ネルゾン劇場のレビューガールの一人レーニ・リーフェンシュタール【音波(おとは)みのりさん】を主役に抜擢して撮影の準備を進めていく。
撮影当日、撮影所の控え室にはジル・クライン【綺咲 愛里(きさき あいり)さん】という女優が不安げな表情でたたずんでいた。
レーニのレビューガール仲間で、半ば強引に撮影に参加することになった彼女に目を留めたテオは、映画で映える化粧の仕方やカメラの見方をアドバイスする。表情が晴れ、瞬く間に美しく変わっていくジル・・・。
テオの初監督映画『忘れじの恋』は大成功を収めるが、それだけではUFAの経営を立て直すことができず、ナチスと繋がりのある実業家フーゲンベルク【壱城(いちじょう)あずささん】によってUFAは買収されてしまう。
ナチスのプロパガンダ映画に利用され、表現の自由が抑圧されていく状況下であっても、人々に喜びや希望を与える映画作りを諦めないと誓うテオ。
一方、『忘れじの恋』で脇役ながらも注目を集め、テオのもとで女優としてのキャリアをスタートさせたジルは、ある日、ナチス宣伝全国指導者ヨーゼフ・ゲッペルス【凪七 瑠海(なぎな るうみ)さん】の屋敷に呼び出される。ゲッペルスは、彼女のとある秘密を握っていた・・・。
見ごろ!見どころ!オススメどころ!
物語の始まりは、最新映画『メトロ・ポリス』のワールド・プレミア。
招待された人々(着飾った出演者全員)がひな壇状の客席に座り、スクリーン幕が上がると一斉に歌い始める場面は、その華やかさと、これから始まる物語への期待に胸が弾みます♪
この項目では、そんな本作の魅力やオススメの場面についてご紹介します!
映画を愛する人々の思い
本作には、映画監督や俳優、映画会社の社長、プロデューサー、シナリオライター、カメラマン、スタジオの裏方など、映画製作に携わる人々が多く登場します。
彼らは、それぞれが誰よりも映画を愛していますが、「人々に夢と希望を与えられる映画を作りたい!」という思いや情熱は共通しています。
劇中では、そんな彼らが抱く怒りや悲しみ、いわゆるマイナス面の感情も多く描かれています。
自分の表現したいものが大衆に受け入れられない悔しさ…
ベルリンのドイツ映画を守るため、会社を売却せざるを得ないやるせなさ…
表現したいものが抑制される環境・社会情勢に身を置く苦しさ…
自分の存在が映画を台無しにするのではないか、というもどかしさ…
一方で、テオが自分の作りたい映画や理想を明るく語り、歌う場面も度々登場します。
テオ自身が苦悩し、迷うこともあるのですが、根底にある理想や映画の可能性を信じる気持ちは全くぶれないんですよね。
周囲の人々も、テオが首尾一貫して持つ「希望」や「理想」に惹きつけられていき、その志についていくと決意します。
物語後半で歌われる♪俺たちの映画♪という曲…
「誇り持ち戦おう スタジオが スクリーンが 我らの戦場」
「ライフルではなく カメラとフィルムこそ 俺たちの武器」
「共に手を携え信じる人と 愛する映画を すべての人のために 俺たちの映画を」
この曲、歌詞と相まって胸が熱くなります!
物語前半、テオとエーリッヒがカフェで話しているところに、鳴かず飛ばずの若手俳優ロルフが、お酒に酔ってやって来る場面があります。
自暴自棄な様子で大騒ぎした後、「映画は好きなんだよ、映画は・・・」というロルフのつぶやき。映画を愛する彼らにとって、まさにその一言に尽きます!
この2人の関係に注目!
①映画監督の青年テオ×新人女優ジル
トップコンビが演じる2人ですが、お互いを「好き」とか「愛している」とかいう具体的な言葉のやりとりは、劇中では意外と出てきません。
それにも関わらず、だんだんとお互いがお互いを思うようになり、自分の夢を分かち合いたいとまで思う存在になっていく過程が自然に表現されていて、実際に観劇した際にも唐突感や違和感を覚えませんでした。
本作は、紅さんと綺咲さんのトップコンビになってまだ2作目の大劇場公演でしたが、台詞に無い感情や思いを、ここまで表現するお二人のお芝居に感激した印象が残っています。
②絵本作家エーリッヒ×恋人ルイーゼロッテ
この2人は実在の人物です。実際の2人が結婚することはなかったのですが、本作ではエーリッヒがルイーゼロッテにプロポーズをする場面があります。
史実と異なる部分ではありますが、エーリッヒ役の礼 真琴(れい まこと)さんとルイーゼロッテ役の有沙 瞳(ありさ ひとみ)さんが、本作で描かれる2人の関係性を1から丁寧に役作りされていることが伝わってきます。
エーリッヒ・ケストナーといえば、『エーミールと探偵たち(Amazon / 楽天ブックス)』や『飛ぶ教室(Amazon / 楽天ブックス)』などの児童向け小説が有名ですね。私も小学生の頃に大変お世話になりましたし、大人になってからも時々読み返しています。
劇中のエーリッヒは不器用で、ルイーゼロッテをとても愛しているのに、それを言葉にして伝えられない人物です。そんな彼に明るく寄り添い、時に強く背中を押すルイーゼロッテ。
本作ならではの2人の関係性が温かく、微笑ましく描かれています。
エーリッヒが部屋で脚本を書きながらルイーゼロッテと話す場面があります。
ルイーゼロッテが部屋を出ていく際に、「忘れもの」と言ってエーリッヒの頬にキスをするのですが、何度観てもキュンとします…
その後エーリッヒがルイーゼロッテへの思いを歌う場面も素敵!
③ベテラン俳優ヴィクトール・ライマン×カフェの女将ゲルダ
ベテラン俳優ヴィクトール・ライマン【天寿 光希(てんじゅ みつき)さん】も、無名時代はテオやエーリッヒと同じようにゲルダ【万里 柚美(まり ゆずみ)さん】のカフェに通っていたそうな。
それが明らかになる場面で2人が昔の思い出話をするのですが、古き良き時代というか、「貧しくても夢に向かって迷いなく突き進んでいた頃」の懐かしい空気が、舞台上に流れているかのような場面になっています。
どのような関係だったのかは観ている側の想像におまかせ!という感じですが、去り際に「ヴィッキー」と呼びかけるゲルダに、ヴィクトールが「その名前で呼んでくれるのは、今じゃあんたくらいだ」と答える短いやりとりにも心温まります。
信じて任せる!…カウフマンの決断
本作を観劇したときに一番心に刺さった台詞は、物語序盤で映画プロデューサーのカウフマン【七海(ななみ)ひろきさん】がUFAの重役たちに放った、「物を作る人間にプライドが無くてどうする?」という台詞でした。
今回観直してみて、改めてカウフマンのすごさに気づかされ、その決断力に胸が熱くなりました。
UFA存続の危機に瀕している状況で起死回生の大ヒットを狙う!というときに、何の実績もない助監督テオを信じて任せる・・・会社員としてそれなりに過ごしてきた今だからこそ、その勇気と、同時に背負ったものの大きさを思うと胸に迫るものがあります。
ワクワクした様子で「俺にやらせてください!絶対にヒットさせてみせます!」と手を挙げるテオもすごいというか、怖い物知らずというか・・・。
何よりも夢が叶い、理想の映画を自分の手で作れるという高揚感が勝っていて、その心意気にカウフマンも動かされたのだろうなと思います。
使用楽曲の試聴・購入について
記事の中でご紹介させて頂いた楽曲を含め、本作で使用された楽曲は、下記の公式サイトから試聴・購入が可能です✨
Quatre Rêves ONLINE / TAKARAZUKA REVUE MUSIC
しらこまるのタカラヅカ小話「観劇当時の思い出」
ジルのレビューガール仲間で、共に女優に転身したレーニ・リーフェンシュタール【音波(おとは)みのりさん】・・・初めて劇場でこの作品を観たとき、最も共感したキャラクターです。
野心がみなぎる感じや調子の良さ、嫉妬にかられた末の行動、弱さ・・・そういった部分に、きれいごとなしの人間らしさがあります。個人的にはそれに加えて、「かわいらしさ」を感じさせるところがポイントだと勝手に思っています!
レーニは、自分が主役として出演した映画にもかかわらず、脇役のジルの方が大きく取り上げられたために嫉妬心をむき出しにします。
その結果、ジルを窮地に追いやってしまうような彼女の秘密を暴露してしまうのですが、映画やドラマ、小説、舞台といった創作物の中では、レーニのようなキャラクターは“悪役”として描かれたり、それに近い存在として観る人の印象に残りがちです。
でも、時にそういった物語の中で描かれる客観的な“正しさ”に、心を痛めてしまう方もいるのではないでしょうか。私もちょっぴりチクッと来ることがあります(笑)
なので、色々な作品に登場する「人間らしい弱さや醜さ」が描かれたレーニのような存在に救われることもあるのではないかな~と思いました。
しかもそこに「かわいらしさ」を感じさせるレーニ!というか、演じている音波さんアッパレです!
そんなレーニが出ている一番好きな場面は、映画『忘れじの恋』劇中劇の場面です!
目立とうとしてカメラの前に出て行ったり、大げさな演技をする様子がコミカルで面白いです。
一緒に出ているばあや【紫(むらさき)りらさん】にもご注目!この場面の紫さんは見るからに“ばあや”ですが、高音に迫力のある歌声の持ち主で、小柄な体型からは想像もつかないキレッキレのダンスも魅力的な娘役さんです♪
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!この記事が、あなたにとって「次なる宝塚作品との出会い」のきっかけになれましたら嬉しいです。
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こんにちは、しらこまるです!
今回は、2017年星組『ベルリン、わが愛』をご紹介します。私が宝塚大劇場で初めて観劇した星組公演です♪